オオクニヌシは兄たちの最後の試練として、
根の堅州国(ねのかたすくに)への旅を命じられます。
不安ながらも、ヤガミヒメを出雲に残し、
一人試練の旅へと向かいます。
Okuninushi is tasked with his final trial by his brothers: a journey to the distant and mysterious Ne-no-Katasu-kuni. Despite his apprehension, he leaves Yakami-hime behind in Izumo and sets out alone on this perilous journey.
第1幕:根の堅州国(ねのかたすくに)への旅立ち
Act 1: The Departure to Ne-no-Katasu-kuni
根の堅州国(ねのかたすくに)は、地上から遠く離れ、
深い闇と神秘に包まれた場所です。
この地は、黄泉の国の隣にあり、
神々の試練や浄化が行われる場とされていました。
この試練は乗り越えられる者は
ほとんどいないと言われる試練ですが。
しかし、オオクニヌシは覚悟を決めて旅立ちました。
Ne-no-Katasu-kuni is a realm shrouded in darkness and mystery, located near Yomi, the land of the dead. It is a place of trials and purification for the gods. Few who attempt its trials ever return.
However, Okuninushi, with determination in his heart, embarks on the journey.
ヤガミヒメ……。
必ず戻るから待っていてくれ……!
Yakami-hime… I will return, no matter what. Please wait for me!
険しい山道には、
足を取られるようなぬかるみと、
獣(けもの)の咆哮(ほうこう)が響き渡る暗い森が
広がっていました。
途中、オオクニヌシは何度も転び、
道を見失いそうになりながらも、進む意志を強く持ち続けました。
次第に、旅の先に立ち込める空気が変わり始めました。
冷たく湿った風が彼を包み込み、
視界が薄暗くなるとともに、
不気味な気配が漂ってきました。
The treacherous mountain paths are fraught with pitfalls, deep mud that traps the unwary, and the chilling roars of beasts echoing through the dark forest.
Okuninushi stumbles and falls repeatedly, nearly losing his way, but his resolve never wavers.
As he progresses, the atmosphere begins to shift. A cold, damp wind surrounds him, the dim light fades further, and an eerie presence hangs in the air.
ここが…。
根の堅州国の入り口なのか。
So this is… the entrance to Ne-no-Katasu-kuni.
オオクニヌシは、
自身の決意を胸にさらに奥へと足を進めました。
根の堅州国(ねのかたすくに)に到着すると、
そこは地上の世界とは全く異なる風景が広がっていました。
足元は暗い石畳のような地面が続き、
ところどころに朽ちた木々が立っています。
霧はどこまでも濃く、光がほとんど届かないように感じられました。
Steeling himself with determination, Okuninushi ventures deeper into the unknown.
When he finally arrives in Ne-no-Katasu-kuni, the scenery is entirely different from the mortal world. The ground beneath him resembles dark, uneven cobblestones, dotted with withered trees.
風の音はなく、不気味な静けさの中に微かな囁き(ささやき)が
聞こえてきます。
そんな中、唯一目を引いたのは、
闇の中にぽつりと輝く神殿でした。
その神殿は黄金の光を放っており、
そこへと続く道がオオクニヌシを誘うように伸びていました。
A thick fog blankets everything, and the light feels as if it has been swallowed by the darkness. The still air carries faint whispers, adding to the unsettling silence.
In the distance, a single structure stands out—a golden shrine radiating light amidst the surrounding gloom. A path leading to the shrine seems to beckon him forward.
第2幕:スセリヒメとの出会い
Act 2: The Encounter with Suserihime
神殿に足を踏み入れたオオクニヌシは、
そこで美しい女性に出会います。
その女性こそ、スセリヒメでした。
スセリヒメは、強い意志と優しさを兼ね備えた雰囲気をまとい、
オオクニヌシをじっと見つめます。
As Okuninushi enters the shrine, he encounters a stunningly beautiful woman—Suserihime.
She possesses an air of gentle strength and keen intelligence. Her gaze fixes on Okuninushi as she speaks.
あなたは誰ですか?
何故ここへ来たのですか?
Who are you, and why have you come here?
私はオオクニヌシと申します。
実は・・・。
My name is Okuninushi. I have come here because…
オオクニヌシは、
兄たちから課された試練の話と、
この地で何が待ち受けているのかを尋ねます。
スセリヒメは彼の話を聞き終えると、
一瞬の沈黙の後、微笑みを浮かべました。
Okuninushi shares the story of the trials imposed upon him by his brothers and his uncertainty about what lies ahead.
After listening intently, Suserihime pauses briefly before smiling.
そうですか・・・。
あなたの兄弟達はそんな事を。
ここはただの試練の地ではありません。
この先に進むには、あなたの全てが試されるのです。
でも…。
私はあなたの力になれるかもしれません。
I see… Your brothers have sent you on quite the ordeal. This is no ordinary place of trials.
To proceed further, everything about you will be tested. But… I may be able to help you.
なんと……。
あなたはどなたですか?
Really? Who are you?
私はスセリヒメ。
この地を支配する神、スサノオの娘です。
I am Suserihime, the daughter of Susanoo, the ruler of this land.
え~。
スサノオ!?
あんたの娘なの!?
What? Susanoo!?
そうだぞ!
美人だろ!?
ははは!!
That’s right! Isn’t my daughter beautiful? Haha!
こら!
物語中に話すな!
静かに!!
Stop interrupting the story! Be quiet!
第3幕:根の堅州国(ねのかたすくに)を統べる神、スサノオ
Act 3: Susanoo, the Ruler of Ne-no-Katasu-kuni
黄金の神殿の奥の台座には、
スサノオが待ち構えていました。
そして、その隣には、スサノオの美しい娘、
スセリヒメの姿もありました。
スサノオの力強い声が響き渡りました。
In the innermost chamber of the golden shrine, Susanoo sits upon a grand throne. Beside him stands his radiant daughter, Suserihime.
Susanoo’s powerful voice fills the room.
俺はこの国を統(す)べる神、スサノオ。
よくここまでたどり着いたな!
だが、ここからが本番だ。
この根の堅州国(ねのかたすくに)を
生き抜けるかどうか、それを試させてもらう!
I am Susanoo, the god who rules over Ne-no-Katasu-kuni. You’ve done well to make it this far! But the true trial begins now.
Let’s see if you can survive the trials of this land!
スサノオ様!
私はオオクニヌシと申します。
どんな試練でも乗り越える覚悟で参りました。
どうかお導きください!
Susanoo-sama! I am Okuninushi. I am prepared to face any trial. Please, guide me forward!
待ってください、父上!
オオクニヌシ様が試練を乗り越えるかどうか、
私はそばで見守ります。
ただ試すだけではなく、
彼の心を知りたいのです。
Wait, Father! I wish to stay by Okuninushi-sama’s side as he faces the trials.
I want to see not only his strength but also his heart.
スセリヒメお前、
そばで見守りたいだと!?
こいつに気でもあるのか!?
認めはしないが、勝手にしろ。
だが試練の厳しさに耐えられないようなら、
情けをかける事はしないからな。
Hah! Suserihime, are you fond of this one? Fine, do as you wish. But know this—if he fails, I will show no mercy.
オオクニヌシ様、大丈夫です。
父は、無茶苦茶なとこがありますので。
私がそばで見守っています。
どうか、自分を信じてください。
Okuninushi-sama, do not worry. I will watch over you. Believe in yourself.
スセリヒメ、感謝します。
ありがとう。
Suserihime, thank you… I will not fail.
ここからスサノオの試練が始まりました・・・。
And so, Susanoo’s trials begin.
本日のお話はここで終わりです。
次回はいよいよスサノオの試練が
オオクニヌシを襲います。
セスリヒメとオオクニヌシとの関係は・・・・。
ではではまたお会いしましょう。
That concludes today’s tale.
Next time, we’ll witness the challenges Susanoo sets before Okuninushi and how his relationship with Suserihime evolves.
Until then, take care!
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